青葉 ~谷口の根っこ

青葉

必要とされなかった場所。

恋い焦がれ、見つめ続けて。認められたくて。

骨の髄まで染み込んでいるのに。

思いは叶わなかった。

今、その前に、自分は胸を張って、立てるだろうか。

さて、毎度独断と偏見、思い込みでいきます。

谷口君と青葉。

以前、青葉語りで、青葉の選手達が、「敵に勝つよりも監督に認められること」が最重要だった、というのを書いたことがあるんだけども、その前後のキャププレ仲間とのチャットだったかメールだったかで、野球留学の話題になって、専修館のような高校生と比べて、中学で寮生活、野球留学ってのはどうなんだろう、という話になった。

まだ自己の確立前の段階での両親と離れての寮生活。内部競争。「父たる存在」の欠けた状態。

青葉の部長、という存在は、ある意味、青葉野球部員にとっての、「父」にあたるんじゃないのかなーと、思ったのよね。よくも悪くも、依存する「父」であり、尊敬する「父」であり、逆らえない絶対の「父」であり。 

そろそろ本物の父親には反抗したりする年齢だ。理想を外に求めたりする年齢だ。そんな中、野球については、絶対この人について行けば間違いない、という存在。全国優勝常連、青葉の、部長。あこがれの「父たる存在」でしょ?

そうすると、2軍の子達が「父」に認められることに必死になるのも分かる気がする。1軍、特に、佐野は「父に認められた子供」なんだよ。

谷口君は、青葉では「父に認められなかった子供」。

あの、「対決青葉学院の巻」の胸をかきむしられるような扉絵、あれを見たとき、感じたのは、捨てられた、置き去りにされた、なんかもう、言葉にできないほど絶望と孤独なんだけど。谷口君にとって、青葉の野球とは、そういうものだったんだな、憧れて憧れて、でも、認めてもらえなかった、「父」、青葉の野球そのものと、その象徴としての部長であり、佐野であるんだなと。(そんな谷口君を救うのが、本物の父親である父ちゃんだというのが、また素敵なんだけども。「いいんだいいんだ、よくここまでがんばってきた、父ちゃんオメエをみなおしたよ」届かなくても、抱きとめて認めてくれる「父」という父ちゃんの存在があって、ほんとに良かった。で、青年になって父ちゃんの存在が消えて行く頃にでてくる倉橋というタイミングも・・・おっと、それはまた別の話。)

からくりさんが以前言っていた「質の良い野球を見てきた経験」というのが、谷口君にとって、どういう意味を持つのか。

谷口君が、前を向いてがんばる子になったのは、父ちゃんと前キャプテンのおかげだけど、「青葉の野球」が彼を引っぱり上げたんだと思う。

いつも、基準が「青葉」なんだろうなーと思う。

「でも、青葉のレギュラーだったらこのへんからだってとれるんだ。さあ、たのむよ父ちゃん!」

「どうも、ほんとの青葉が分かっていないようだ。このさい青葉の練習を見学させようかと思ってな」

「まともに青葉と試合をするにはこれしかないと思うんだけど」

「明日からじゃない、今からだ!」

「青葉のナインとは体つきからして違うんだ 2倍も三倍もやらないと負けちゃうよ!」

「なんだおまえ負けるつもりで練習してたのか?」

「俺達みたいに素質も才能もない者は こうするしか方法がないんだ」←比較の対象は青葉でしょ・・

ホント、骨の随まで染み込んでるんだなー、青葉の野球が。

青葉に見学に行ったとき、部長に挨拶するところ、なんかホント嬉しそうなんだもの、谷口君。

「そうか、みんなよくがんばったね」といわれたとこなんか〜〜、照れてるし。部員だったときは、声もかけられなかったんだろうなあ。

墨谷との試合、図に乗る2軍ナインと対照的に、部長は静かに観察してるんですよね。

「よくとるな。」「早く守りにつかんか」無言で待つ。

「なんとかできるか、本当に」

佐野も見えている。「とてもおまえらの相手じゃない」

2軍よりも、実は谷口の野球が先に青葉の野球に追いつく瞬間、ですよ。理想だから、追いつくんです、追い越すんです。

で、一方の谷口ったら。「アレだよ、1軍のプレイは・・・」(表情とうらはらになんですかこの賛辞!)

で、問題の例の青葉14人以上総入れ替え事件なんですが。

抗議する。けれど、

「仕方がない、守ろう!」ですよ、キャプテンったら。

丸井がきったねえと怒り、イガラシがなりふりかまわねえんだから、と言うぐらいひどい敵さんに対して、「しかたがない」ですよ。

・・・・そういうなりふり構わない勝利の執念もふくめて「青葉」なんですか?谷口さん??

それぐらい強大なただじゃすまない相手なんだって、はなから分かってるみたいじゃないですか!

・・・・絶対、谷口さんの勝利への執念は青葉仕込みもとい部長の影響だと思うわ・・・。

「谷口君とかいったね」←このおっさん、はじめて名前呼んだんとちゃうやろか。絶対、そうに違いない。

「2軍などをだして、全く失礼なことをした・・・・」「しかし分からん・・・彼がうちの2軍の補欠にいただなんて」

そういうわけで、もうひとりの「父」はようやく認めたんですよ、忘れられていた青葉の子を。

で、子供の方は、もうとっくに、父越えできちゃってるってこった。

「さあ、帰ろう!また次があるじゃないか」

ま、そういう読み方すると、部長に親近感もてますよーという、おはなしでした。

余談ですが、私は谷口も時と場合によっては、球数投げさせて相手を疲れさせることぐらい作戦としてはやると思ってます。

2009.04.27?

Comment

くりたらし

こんにちわ。?

今日、一月振りで、この考察、二回目読みました。?

谷口の野球の基準が青葉であるというのは、全くその通りだと思います。?

青葉イコール日本一だから青葉を倒したいんじゃなく、他の学校に負けたとしても青葉だけ倒したいんですよね、谷口は。?

やっぱり、認められなかった場所だからだと思います。?

対戦前までは激しく部長を意識してたでしょう。?

でも自分自身が力を付けて、更にかけがえのない仲間達を得て、大きくなった谷口の中で、いつの間にか部長の存在感が消える。?

「谷口くんとかいったね」と声を掛けられる頃には、もう部長なんか見向きもしなくなっちゃってる。?

雪うさぎさん仰る通り、まさに父親越えですね。?

このさりげないリアル、「普通の少年を描かせてちばあきおの右に出るものはいない」?

いや、納得です。

雪うさぎ

>くりたらしさん?

こんにちは。2回も読んで下さったんだ、コメントありがとうございます〜!?

青葉が目の前に戦う相手として出てきて、間違いなく欲がでてますよね、谷口君。くりたらしさんの言われる「他の学校に負けたとしても青葉だけ倒したい」ホントにそうだと思います。?

青葉への思いが、憎むべき相手じゃなくて、やっぱり渇望かなと思うのは、まあ、映画の室賀監督の解釈のせいもあるかもしれませんが。?

こうやって勝手に意味付けしながら読むのも楽しいのですが、ちば先生の無意識の意識に気づいてドキッとすることがありますね。さりげないリアル、は、ちば先生の真骨頂だなあと同意します。?

監督語りというよりやっぱり谷口語りですが、くりたらしさんに楽しんでもらえて良かったです。

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